小児科
ロタウイルスに注意を
ロタウイルスは胃腸炎を引き起こす代表的なウイルスです。胃腸炎症状が重症化しやすいことで知られています。全世界で年間50万人の5歳未満のお子さんがロタウイルス感染症で亡くなられていると言われています。日本では亡くなられる方は稀ですが、感染力が非常に強く、毎年多くのお子さんが感染しています。
症状の特徴
患者さんの3/4が2歳以下のお子さんです。流行は毎年年明けから始まり、春先にピークを迎えます。おう吐と下痢が主な症状です。潜伏期間は2日程度と言われています。発熱を伴うことも多く、1/3の患者さんが39℃以上の発熱を伴うと言われています。発熱とおう吐から症状が始まり、1~2日してから水下痢が始まる、というのが典型的な経過です。おう吐と下痢で脱水症を来たしやすいこともよく知られています。また、脳炎脳症といった後遺症を残す合併症がよく知られています。
検査・治療
便をとって(お尻に綿棒を入れて)検査することでロタウイルスに感染しているかどうか診断することができます。特別な治療はありません。おう吐や下痢に対してお薬を使ったり、脱水でしんどい場合は点滴を行います。
予防
非常に感染力の強いウイルスです。感染した患者さんの便が一番の感染源となります。ノロウイルス同様アルコール消毒が効きにくく、塩素系の消毒液が効果的とされています。
ロタウイルスワクチン
現在、日本では2種類のロタウイルスワクチンが販売されています。どちらも内服のワクチンになります。2種類のワクチンで接種回数、接種可能期間に違いがあります。(ロタリックス:生後24週までに2回、ロタテック:生後32週までに3回接種)。
おう吐下痢の症状が見られたら、医療機関を受診するようにしましょう。また、小さいお子さんがいらっしゃるおうちでは、ロタウイルスワクチンの接種も考えてみてあげて下さい。
ノロウイルスからお子さんを守ろう
ノロウイルスは嘔吐、下痢などの症状を来たす胃腸炎の原因ウイルスの一つです。その感染力は非常に強く、時に食中毒の原因となったりもします。ノロウイルスからの感染予防法をまとめてみました。お子さんをノロウイルスから守りましょう。
食事の準備に関して
人によってはノロウイルスに感染しても症状を発症しない人もいます。ご家族が気付かないうちにお子様にノロウイルスを感染させない為に、次の様な事を注意するよう言われています。
ⅰ.調理の前と後で石鹸、水でしっかりと手洗いをする。
ⅱ.食事の配膳をする場合も手洗いをする。
おう吐物、下痢便の処理
ノロウイルスに感染した人のおう吐物、下痢便には非常に大量のノロウイルスが含まれています。そして、そのうちごくわずかな量が体に入っただけでも、簡単に感染が成立してしまいます。塩素系の消毒剤(ピューラックス、ミルトン)や家庭用漂白剤(ハイタ―、ブリーチ)などでなければ効果的な消毒ができないと言われています。
処理:まず、おう吐物、下痢便の処理をする前に、処理に当たる人以外を遠ざけてください。飛沫感染と言って、小さな粒子に乗ったノロウイルスを吸い込んでしまう事で感染する事があるからです。少なくとも3mは離れるようにしましょう。そして、処理をする人は早めに処理しましょう。
方法:マスク、手袋をしっかり着用し、雑巾、タオルなどで、吐物、下痢便をしっかりとふき取ってください。ふき取った雑巾、タオルはビニール袋に入れて密封し捨てましょう。
おう吐物や下痢便で汚れた衣類は、マスクと手袋をした上でバケツなどで水洗いし、さらに塩素系消毒剤(200ppm以上、家庭用漂白剤を200倍程度に薄めて)で消毒する事が勧められています。いきなり洗濯機で洗うと、洗濯機がノロウイルスで汚染され、他の衣類にもウイルスが付着するからです。
おう吐物や下痢便が布団やリネンなどに付着した場合は、まず洗剤などで下洗いをしてください。下洗いした後に消毒として85℃で1分以上の熱水洗濯が効果的と言われています。布団などですぐに洗濯できない場合はよく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的であると言われています。
アルコールで十分に消毒できないなど、やっかいなウイルスです。みんなで感染を広げないようにしましょう。
インフルエンザに注意を
インフルエンザは冬に流行し、毎年人口の5~10%(日本人では600万人から1200万人)が罹ると言われています。高い熱が特徴で特にお子さんはしんどくなりやすく、脳炎脳症といった後遺症を残す合併症も有名です。本格的に寒くなってきました。インフルエンザに注意しましょう。
インフルエンザって?
突然の高熱を特徴とする感染症です。頭痛、関節痛、そして全身倦怠感などの症状を伴う事があります。一般的にA型とB型の2種類に分けられる事が多いですが、A型の方が熱などの症状が重くなりやすく、B型は嘔吐や腹痛などの胃腸炎症状を伴う事が知られています。潜伏期間は2~3日と言われています。
予防法は?
咳やくしゃみの際に口から発生される小さな水滴による飛沫感染でインフルエンザは広がります。インフルエンザにかからないようにマスクをする事は大事です。しかし、実はインフルエンザにかかった人がマスクをする方が予防効果は高いと言われています。インフルエンザに罹らないよう気をつけるのと同時に、罹ってしまったらインフルエンザを広めないように気をつけましょうね。お家に帰ったら、手洗いうがいも忘れずに、また、小さいお子さんを人ごみに連れていくのは極力控えましょうね。
インフルエンザかな?と思ったら
高い熱がでたら医療機関を受診して必要なら検査を受けましょう。もしもインフルエンザに罹ってしまったら、水分をしっかり摂って、おうちでゆっくり休みましょう。インフルエンザ用のお薬もありますので病院で相談しましょう。年齢によって処方できる薬が変わってくる事があります。併せて相談してみて下さい。
通園、通学について
「発症した後5日を経過し、その上、解熱した後2日(小学校入学までは3日)を経つまで」は通園、通学してはいけません、と法律で決まっています。通園、通学に関しても病院で相談してくださいね。通園許可証などが必要かどうかも保育園、幼稚園に確認してください。
小さなお子さんの咳の風邪
「RSウイルスについて」
赤ちゃんは生まれてくる時に「抗体」といって、風邪をひきにくいようにお母さんから免疫をもらって生まれてきます。生後数ヵ月は風邪をひきにくい、というのはこの為です。しかし、中にはお母さんから「抗体」をもらっていても、生まれてすぐから感染しやすい風邪があります。その1つがRSウイルスです。小さなお子さんがかかると咳がひどくなったり息をするのもしんどくなる事がある、小さい子には要注意の風邪のお話です。
症状
大人が罹ると軽い風邪で終わる事が多いのですが、小さなお子さん、特に1歳までのお子さんが感染すると非常に症状が重くなる事があります。息がぜいぜいし、咳がしんどくなったり、息の仕方自体もしんどくなる事もあります。25~40%のお子さんで気管支炎、肺炎を起こし、1歳までのお子さんの2~3%に入院が必要となると言われています。生後1ヵ月までの赤ちゃんが感染すると無呼吸といって、息を止めてしまう事がある事も良く知られています。急性脳炎の合併も知られており、時に命に関わる感染症です。
検査
鼻水をとってRSウイルスに感染しているか調べるのが一般的です。気管支炎、肺炎を起こしていないかレントゲンを撮って調べてあげる事も時に大事になります。
治療
生後数ヵ月のお子さんで咳がひどかったり、息の仕方がしんどそうにされる場合は、この病気を疑う事が大切です。RSウイルスに対する特別な治療薬はありません。早く診断をつけてあげて適切な治療を行いましょう。
1歳からの予防接種
「おたふくかぜワクチンについて」
おたふくかぜワクチンは1歳から接種することができます。おたふくかぜの病気の説明と合わせて、予防接種の大切さについてお話ししたいと思います。
「おたふくかぜ」ってどんな病気?
多くの場合、熱が出るのと同じくらいの時期から耳の後ろにある「耳下腺」あるいは、あごの下にある「顎下腺」という唾液を作る場所が腫れてくる事が特徴の感染症です。唾液を作る場所が腫れるので口を開けたり、食事をするときに痛みを伴ったりします。通常1週間くらいで自然と良くなる事が多いです。おたふくかぜの原因ウイルスをやっつける特別な治療薬はありません。熱が高くてしんどい時は熱さましなどを使いながら治療する事になります。
潜伏期間は2-3週間くらいとされているので、おたふくかぜのお子さんと接触したら、2-3週間くらいはおたふくかぜにかからないか注意して診てあげてください。通園、通学を再開するのにあたって、診断書が必要かどうかも、学校、幼稚園、保育所に確認しておいてあげて下さいね。
予防接種は必要?
おたふくかぜは非常に多くの合併症を伴う事が知られています。ウイルスが脳を覆う髄膜という場所に感染する「無菌性髄膜炎」は3-10%と非常に効率で合併する事が知られています。非常に頭が痛くなったり、吐く事が続いたりする症状が特徴的です。また、頻度は低いですが、脳に後遺症を残す事のある脳炎の合併も知られています。他に有名なのが、思春期以降におたふくかぜにかかった場合の合併症の精巣炎、卵巣炎です。思春期以降に感染すると25%くらいの頻度で精巣炎に、また5%くらいの頻度で卵巣炎を合併すると言われています。精巣炎を合併した場合はその後生殖能力に問題を生じる事が知られています。また、妊婦さんが妊娠初期におたふくかぜに罹ると30%近くの割合で流産すると言われています。あと、一時的に耳が聞こえにくくなる難聴も有名な合併症です。おたふくかぜを予防するだけでなく、これらの合併症からお子様を守ってあげる意味でも、おたふくかぜの予防接種の必要性は高いと考えられています。
予防する効果は? 安全性は?
予防接種をしていた場合、おたふくかぜにかからない確率は75-90%程度と言われています。接種後一時的に3%くらいの割合で耳下腺が腫れることが知られていますが、重篤な合併症は非常に稀だと考えられています。
10月からインフルエンザの予防接種が始まります
10月に入るとインフルエンザの予防接種が始まります。「インフルエンザなんてまだまだ先の冬の病気」と思っていらっしゃる方も多いと思います。ですが、お子様の多くは13歳未満の場合、インフルエンザの予防接種は2回の接種が必要になります。インフルエンザがはやり始めた頃に予防接種がまだ終わっていない、なんて事がない様に早めに済ませておきましょうね。
6か月のお子さんから接種できます。6か月未満のお子さんのいらっしゃるお宅ではご家族が予防接種をして、おうちにインフルエンザを持ちこまない様にしましょうね。
予防効果はワクチン株と流行株が一致した場合、70-90%で発病を予防できると言われています。
インフルエンザにかかったかなと思ったら
インフルエンザは高い熱を特徴とする感染症です。なにも治療を行わないと、一旦熱が下がりかけた後、また熱が高くなって(二峰性発熱)1週間くらい熱が続く事があります。
鼻水をとってインフルエンザかどうか検査をするのが一般的です。ただ、この検査なのですが熱が出てから1日以内、特に半日以内はインフルエンザであってもインフルエンザではないという結果が出やすい事が知られています。
夜に高い熱が出ても慌てずに、次の日の朝まで待って医療機関を受診するようにしましょうね。
お薬の使い方
インフルエンザ用のお薬はタミフル、リレンザなど何種類かのお薬が開発されています。どの薬も、5日分処方されたら、途中で熱が下がって元気になっても、お薬が無くなるまで最後まで飲みきって(吸入して)下さいね。熱でしんどくなる子が多いです。高い熱でしんどそうなら、熱さましも使ってあげましょうね。
通園・通学許可について
2012年4月から通園・通学の基準が変わりました。
1. 熱が出てから5日以上経っている事
2. 熱が下がってから2日以上経っている事(小学校入学までのお子さんは3日以上)
法律で決められた基準ですので、元気になってもしばらくはおうちでゆっくりしていましょうね。
通園・通学に許可証が必要かもご確認ください。
インフルエンザは時に脳炎、脳症という後遺症を起こす病気の原因となったりします。まずは予防が一番大事。しっかり予防接種を受けましょうね。
(上記内容は2013年度のものです。)
予防接種デビューは2か月から
2013年4月から予防接種が大きく変わりました。
数が増えたり、いろんな接種の仕方があったりとご不安な事も多いと思います。
2か月から受けられる予防接種について簡単にご説明します。
同時接種ってなあに?
1回に2種類以上の予防接種を接種することです。1度に多くの予防接種を済ませる事で、風邪をひいたりして予定通り接種が進まない事を減らそうという目的があり、小児科学会も同時接種を勧めています。メリットは1回で複数の予防接種を済ませる事が出来ることです。安全面は心配しなくていいとされています。
定期接種と任意接種
予防接種には定期接種と任意接種の2種類があります。定期接種は全員受けないといけない予防接種、任意接種は接種したほうが良い予防接種です(全員が受けないといけないわけではありません)。
Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン
満2か月からの接種となります。
どちらも2013年4月より定期接種(みんな接種しないといけない予防接種)となりました。主な目的は化膿性髄膜炎という、インフルエンザ桿菌(Hib)、肺炎球菌が原因で頭の中に炎症がおこり、時に後遺症を残す病気を予防しようというのが目的です。一般的には1カ月毎に3回接種した後に、1歳を過ぎて1回接種します。費用はかかりません。
ロタウイルスワクチン
ロタリックス:生後24週までに2回接種を終了します。
ロタウイルスという、嘔吐下痢がひどくなる胃腸炎を、かかっても軽く済ませようという目的の予防接種です。また、非常にまれなのですがロタウイルスは脳炎、脳症といい、頭の中で後遺症を残す感染症を起こす事が知られています。それを予防する事も目的とされています。任意接種ですのでご希望の方が接種するという形になります。当院では4週間開けて2回接種する飲み薬を採用しています。ロタウイルスワクチンは2種類ありますが、一般的に効果に大きな差はないとされています。
B型肝炎ウイルスワクチン
2か月から
B型肝炎という肝炎を予防するためのワクチンです。頻度は決して高くないのですが、一部に、慢性に進行するウイルスがいる事もあり、予防接種が勧められています。4週間開けて2回接種したのち約半年開けて1回接種する事が一般的です。
以上、たくさんあって大変ですが、赤ちゃんを悪い病気から守る大事な注射です。一緒にがんばりましょう。
小児の「夏かぜ」について
アデノウイルス感染症
高い熱が特徴的な夏かぜです。39℃前後の熱が比較的長く(平均5日程度)続く事が多いとされています。熱以外にのどの痛み、咳や鼻などの症状を伴う事があります。眼の充血(結膜炎)が見られた場合を一般的にプール熱(咽頭結膜熱)と呼びます。のどを綿棒で検査する事で、その日のうちにアデノウイルスにかかっているかどうかが分かります。
ヘルパンギーナ
のどの奥に発疹を作り、のどの痛みを特徴とする夏かぜです。のどの痛みが強いと、よだれが増えたり、飲み物を飲んだり食べたりできなくなる事もあります。熱が出る事も多いです。
手足口病
ヘルパンギーナと同じ様に、のどの奥の発疹、また、手、足の発疹が特徴的な夏かぜです。手、足、口の中に発疹ができるので手足口病と呼ばれています。のどの痛みが強いと、ヘルパンギーナと同じようによだれが増えたり、飲み物を飲んだり食べたりが難しくなる事があります。熱が出る事も多いです。
これらの夏かぜはウイルス感染症ですので抗生剤は効きません。熱が高いうちはしっかり水分をとって、おうちでゆっくり休みましょう。熱でしんどそうだったり、飲み物も飲めない様でしたら、点滴等が必要な場合もありますので早めに小児科を受診するようにしてください。
これらの夏かぜのほとんどは、熱も下がり元気になれば幼稚園や保育所に通っても良いとされていますが、プール熱(咽頭結膜熱)は、「症状がなくなって2日経ってから通園しましょう」と法律で決められています。どの夏かぜも幼稚園、保育所によっては通園許可証が必要な場合がありますので、一度ご確認ください。